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正常完済とは

正常完済とは、家計を括り直すことにより収入を増やし、無駄な出費を省き、債務返済能力を高めて債務返済を続ける方法である。この正常完済も多重多額債務者には不可能とみえるが、家計を括り直すことにより返済資金を捻出できる場合がある。正常完済においては、まず家計の収支をとらえるところから始まる。家計簿の記載があれば最も好ましいが、債務問題を抱えた家計では家計簿の記載がない場合が多い。そこで、給与明細やレシートなどより家計を推計する、あるいは1週間程度の支出をメモする程度から家計収支を推測し、そこにどのような問題点があるのかを考えていく。もちろん債務問題を抱え、返済が困難化している状態では、赤字であることは明白である。

そこで、赤字を解消するために収入の増加の可能性を追求し、支出を抑えるために本当に必要な支出かどうかの確認作業を行う。収入の増加の方法としては、家族の協力を得て、配偶者や子どもにパートやアルバイトによる収入拡大が可能かどうかを探ることも1つの方法である。また、失業手当等の社会保険制度、生活保護といった公的扶助制度、障害者福祉や母子福祉、児童福祉どいった社会福祉制度の利用によって公的な援助を受けることができるかどうかの可能性を追求することも必要である。一方、支出においては、無駄な出費があるかどうか、出費を抑える方法がないかどうかの確認を行う。

高級品の購入等高額商品購入が多ければ代替物利用を考える。スーパーの売出しを利用するなどもその1つである。ただし、一般的には無駄と思われる支出であっても、本人にとっては大切な支出という場合もある。たとえばペットの餌代、高齢者世帯の電話代などである。そのような支出を削ることは、債務者にとって新たなストレスを与えるだけとなる。したがって、どの項目を削れば債務返済を継続することができるかを徹底的に検討する必要がある。このように家計収支をつぶさに検討すれば2万円程度の資金が出てくるとされている。

ただしこの場合、それまでの生活を大きく改める必要があり、第三者的な存在がなければ再び債務返済不能に陥ってしまう可能性がある。また、我慢の限界は3~5年といわれているので、3年程度で完済できるかどうかが大きな鍵となる。いずれにせよ、債務者の忍耐を必要とする方法であることには変わりないだろう。以上のとおり、債務整理の方法はさまざまである。重要なのは、これらの手段からどの方法を選ぶのかは債務者本人が選択するということである。他人から強制的に選択させられた方法では、もしもうまくいかなかうた場合、責任転嫁により状態が悪化するおそれがあるからである。

また、自ら選択することにより決意と責任感が与えられる。ただし、できもしない方法を望む債務者がいることも事実である。多くの債務者は正常完済を望む。そのため、家族と相談なしにパートやアルバイトを強制しようとしたり、家族の支出を強制的に削減しようとしたりすることもある。絵に描いた餅にならないようにするには、実行可能性がどれくらいあるのか、またそのためにはだれに協力を仰がなければならないのか等も含めて、カウンセラーと納得がいくまで相談することが必要である。

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ギャンブル依存症の問題点とは

依存症になりやすいギャンブルについては、スロットマシンなどのマシン系で依存症になる人が圧倒的であり、音や光の刺激に加え、壁に囲まれたなかでマシンと向かい合って興じるという環境は、興奮度を高め、非常に依存症になりやすい。この状況をより進行させるものとして、日本型ギャンブルシステム(娯楽産業として君臨しているパチスロ業界)がある。いまの日本には1万人に400台の割合でパチンコやスロット台があり、パチンコ・スロット業界の売上げは30兆円にものぼる。気軽にサンダル履きで入場でき、身分証のチェックもない、より至近の生活圏のなかに存在するギャンブル場は、世界に類をみない特異なものである。

娯楽場に入るのだからということで罪悪感は薄められ、若年時代から抵抗もなくギャンブル場に出入りする習慣を容易に身につけてしまう。本人もどこかおかしいとは思っているが、告白するとギャンブルができなくなるから隠し続け、借金を返すためにギャンブルを繰り返してしまう。治療回復に関しては、自助グループに参加し続けることが最も効果的だといわれている。だから、家族からの相談、多重債務の相談を受けたとき、依存症を見出し自助グループにつなぐ必要がある。

GA(ギャンブラーズ・アノニマス:経験と力を分かち合って共通する問題を解決し、ほかの人たちもギャンブルの問題から回復するように手助けしたいという共同体)、ギャマノン(家族のためのミーティング)は全国各地で活動している。GAに通うこと、通う気持ちになることが回復の第1ステップである。「通う気持ちになるまで話をする、そして行動を起こさせることは多重債務相談の、とりわけ被害者の会の役割だ」と、吉田洋一相談員(依存症問題対策全国会議の代表幹事。熊本市)は強調する。ギャンブル依存症の問題に長く取り組んでいる吉田相談員によると、「ギャンブルに借金の主な理由がある」とする相談者が増えているという。

具体的には、少し前までは14~15%だった比率が、現在では22~23%になっている。一方、「大牟田しらぬひの会」の調査によると、借金の原因がギャンブルというのは12~13%で、このほか浪費を原因とするものが9~11%ある。両者を合わせると23%ほどである。この調査は、実際に多重債務者から相談を受けているカウンセラーが相談カードを集計したもので、信頼性は高い。「ギャンブル、アルコール、買物中毒のような依存症は、専門的な治療が必要である。被害者の会がしているのは、法的問題の解決と併せて精神的な安定の確保である。これによって、ようやく人生の再出発が可能となる」と指摘している。

ギャンブル依存症

全国クレサラ対協の『2008クレサラ白書』を引用しながら、ギャンブル依存症の問題について考えてみたい。ギャンブル依存症者は、全国に200万人ほどいると推測されている。依存症者は、多重債務に陥って発覚するケースが多い。ギャンブル依存症についての社会の認知度は低く、いまだに「本人の意志の弱さ」が原因とみる傾向が根強く、予防や回復に向けた国の対策の動きも鈍いのが実情である。多重債務問題に取り組む弁護士たちは、全国クレサラ対協のなかに依存症問題対策全国会議を発足させた。国にギャンブル依存症への保険適用を働きかけつつ、「依存症は病気。正しい認識を」と市民に理解を促す方針である。

『ギャンブル依存症』(日本放送出版協会、2002年)の著書がある田辺等医師(北海道立精神保健福祉センター部長)は、「自分をコントロールできないほどギャンブルにふけるのは、意志の問題ではなく病気」だとする。ギャンブル依存症は、借金を重ねて仕事や家庭に大きな影響が出ても、なおギャンブルから抜け出せない症状で、世界保健機関(WHO)も病気として認定している。依存症者は借金をしてでもギャンブルに没頭する。ギャンブルの資金に充てようと借金を繰り返すため、依存症者のほとんどが多額の債務を抱えてしまう。借金の原因のうちギャンブルが13%を占めているという全国的な統計があるが、それについては、「これは氷山の一角にすぎない」という。

借金苦から詐欺や横領などの犯罪を起こす場合もある。ギャンブル依存症者の回復施設「ワンデーポート」の中村努施設長によると、「依存症者は本人もわからないうちに道徳心がなくなり、犯罪に走ってしまう」とし、「本人は病気だと認めないのが、この病気」であり、依存症者は「いつでも止められる」と思い込み、もう自力で抜け出せない状況に陥っているとは夢にも考えないという。家族も依存症者とともになんとか問題を解決しようと苦慮し、本人以上に深く苦しむ。その結果として、離婚など家庭が崩壊することも多い。強度のストレスから中高年になってギャンブル依存症になる人も多く、原因は本当にさまざまで、「カジノなどのギャンブル施設や簡単にお金が借りられる環境が近くにあることもよくない」と指摘されている。

リピーター対策

「高松あすなろ会」の多重債務リピーター調査によると、45%の人が2回目以上の再度の借金整理だった。1回目の借金整理のときに借金原因が未解決のままだったり、生活の立直しが不十分だったりしたために、再び借金したものと思われる。また、何度も家族の援助で解決したにもかかわらず、依然としてギャンブルが止められない人がいる。これが現実である。貧困など生活費不足が原因の人であっても、債務を整理しただけでは、再び借金を繰り返してしまう人がいる。それには、貸金業者からの誘惑もある。家族の援助で一括返済した業者から本人のケータイに「お金を貸しますよ」という電話が入る。

また、自己破産した人がヤミ金などのダイレクトメールをみて電話するというケースも少なくない。再び借金する人のなかには、借金に依存する習慣を身につけてしまった人が少なからずいる。福岡の「ひこばえの会」の相談統計によると、全相談数のうち、リピーターの割合が2001年の4分の1から2005年の3分の1に4年間で増加した。この4年間で、リピーターが以前に債務整理をしたのは「身内の援助を受けて」という回答がこの4年間で54%から23%に激減し、「法的解決をした」という回答が39%から60%に大きく増えている。

その法的解決の内訳は破産が3割から5割へと増えている。この相談統計について、「多重債務は原因ではなく結果だといわれて久しいが、法的解決だけですむケースと、それだけでは生活の立直しには至らないケースがある。貧困、病気、ギャンブルや買物・アルコールなどの依存症、障害などによる低い生活能力、長期にわたるストレスいっぱいの生活などから自己肯定感がもてなくなり、エンパワーメント(励まし)が必要な人などに対する援助技術が多重債務対策にも必要である」と分析し、結論として「多様な多重債務者に多様な援助を」と訴えている。

支え合い励まし合う場として

「呉つくしの会」では、2008年10月に大人と子供18人がイモ掘りにバスで出かけ、バーベキューを楽しんだ。これは、この年2回目のレクリエーション活動である。また会の広報活動として、11月の日曜日、朝から市内にポスター・ステッカー貼りに取り組んだ。参加者19人が車5台に分乗して、市内全域に600枚近くのステッカーを貼りめぐらした。「1人でも多くの人が助かるようにと思って貼った」という参加者の感想がニュースで紹介されている。一方、「大阪いちょうの会」は毎月第2土曜日に、昼食を皆でとりながらの交流会を開いている。参加者は何でも自由に好きなことを話していい。1人ずつ気持ちを吐き出してもらう。話すことについては、無理に強要はされない。話すのが苦手だという人はパスしてもいい。こんな気楽な会合だ。

運営委員はかつて被害者だった人である。だから皆で気楽に話し、苦労話を共有し合う。「もう二度とこんな状態に、悲しい嫌な思いに包まれたくない」だからこそ、いま嘆いておく。さんざん自分を嘆いて、悔しい気分を味わい、それを言葉に乗せてだれかに聞いてもらう。心のなかによどみ、たまったものを出して、洗い流し、新たな自立再建を目指す。被害者を卒業したら、今度は「支える」側としてボランティア運営の一員として手伝うようになる。そのなかで、いろんな話を聞くのである。この循環を繰り返しながら、「生きる幸福を感じましょう」「自分を信じて自由に笑いましょう」と呼びかけている。

「和歌山のあざみの会」は、借金を急いで解決するのではなく、まず生活の立直しが重要だと強調している。返済の督促に対して「すみません。ありません」といって開き直ることを相談に来た人に勧める。借金返済に謝意を示そうとして無理に借金を重ねてはいけない。被害者の会は、同じ経験をしてきた人が話を聞くということで、相談に来た人が心を開きやすい。さっきまで死ぬことしか考えでいなかったような人がそこで話すなかで、わずかな希望を見出して生まれ変わった気になってくる。また、多重債務者の多くは金銭感覚が破壊されているので、家計簿を管理できるようになることが大切だ。貯金が少しずつ貯められていくようになれば、しめたものである。

福岡市にある「ひこばえの会」は、地元マスコミから何度も好意的に取り上げられ、活動状況が詳しく紹介されている。そこは「会員心得10ヵ条」というものを定めている。会では、「借金病」を治し、生活を立て直し、明るい生活を送るために次のことを呼びかけている。その8「すべての負債を明らかにして、家族の協力を得て、全面的に解決します」その9「健全な金銭感覚を身につけるため『家計簿』や『小づかい帳』をつけます」いずれも、生活の立直しに欠かせないものである。しかし、全国各地に被害者の会ができているとはいえ、年間に救済されている人は多くて40~50万人とみられている。つまり、200万人以上はいるとみられている多重債務者のうちの2割しか救済されていないということである。残された8割の人にどういう有効な相談体制をつくっていくか、依然として今後の大きな課題である。

クレサラ被害者の会とカウンセリング

全国クレジット・サラ金被害対策問題協議会(全国クレサラ対協)は2007年6月、京都で第15回クレサラ実務研究会を開催した。そのとき、「これからのクレサラ相談窓口のあり方を考える」と題するパネルディスカッションなどがあり、その内容が書籍として刊行されている(r改正貸金業法とこれからのクレサラ相談窓口のあり方を考える』耕文社、2007年)。主としてそれをもとにして、被害者の会の果たしている役割などを紹介したい。

アメリカ発の金融危機に端を発して、世界的にも不況が一段と深刻になっている。そのため、会社の倒産による失業、残業がなくなったりすることによる給料の大幅ダウンや遅配・欠配など、借金の原因として生活苦が3割以上を占めていることは間違いない。「子供たちの学資が足りない」「家族が病気になって治療費がかさんだ」なども借金の原因になっている。非正規雇用のため、一見すると手取り給料は高そうにみえても、社会保険・労働保険に未加入という人も少なくない。

彼らは貯えもないため、失業したら直ちに明日から住むところがなくなってしまう。また、病気になっても医師にかかれないという人は多い。このような人々にとって、生きていくためには借金するしかないよ借金返済のために借金を重ねたとき、そのことを責めても仕方がない。被害者の会の1つである「高松あすなろの会」の原因調査によると、借金の原因を「生活費不足のため」とするのが半数近い44.7%である。ちなみに、2位は「ギャンブル」で31.4%となっている。このほか「遊興費」が14.0%を古める。

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